哲学者アントニオ・ネグリ氏不在の講演会が開催=東京大学安田講堂

【PJ 2008年03月30日】− イタリアの哲学者で『帝国』や『マルチチュード――<帝国>時代の戦争と民主主義(上・下)』の共著で知られるアントニオ・ネグリ氏の来日講演が外務省と法務省の措置で中止になった。ネグリ氏は財団法人国際文化会館の招きで3月20日に来日し、京都大学東京大学東京藝術大学で講演を行う予定であった。

 しかし、3月17日来日直前に外務省が入国査証申請を行うよう要請。さらに法務省ネグリ氏が政治犯であった証明書を提出するよう求めた。ネグリ氏はすべての刑期を終えた2003年10月以降、現在まで22カ国を歴訪したが、そのどこからもこのような要求を受けたことはない。

 ネグリ氏は来日できなかったが、京都大学は創立100周年記念ホールで予定通りアントニオ・ネグリ講演会「大都市とマルチチュード」を開催した。東京大学では29日、安田講堂で創立130年記念事業の一環として「アントニオ・ネグリ氏講演会 新たなるコモンウェルスを求めて」が開催された。予定されていたネグリ氏の講演は電話回線を利用して質問形式で行われた。ネグリ氏の声は会場のスピーカーから800名近くの参加者に届けられた。
 
 東京藝術大学では29日と30日の2日間に渡り、「ネグリさんとデングリ対話」ドンデン返し!と名付け、様々な企画が予定通り開催される。30日は「アントニオ・ネグリ氏来日断念 連帯モチつき」が午前11時から始まり企画を盛り上げる。15時からのシンポジウム【大ラウンド・テーブル「マルチチュードか、プレカリアートか?」── この国の「路上」からトニ・ネグリを歓待する】ではネグリ氏との電話での対話も行われる。

 ネグリ氏が来日できなかった事に対して、「この程度では困らないよ。」と東京藝術大学<ネグリさんとデングリ対話> 総合プロデューサーの木幡和枝氏は言うネグリのスローガンのひとつに「芸術は革命に先行する」がある。木幡氏は芸術を再定義しようとするネグリの意思に反応しこのイベントを立ち上げた。【了】

関連情報
アントニオ・ネグリ来日プロジェクト - NEGRI TOKYO.ORG
財団法人 国際文化会館
東京藝術大学よりライブ中継(30日)

掲載記事 http://news.livedoor.com/article/detail/3575529/


アントニオ・ネグリ氏が予定していた講演原稿が映像とともに伝えられた。(29日東京大学安田講堂にて 撮影:澤口佳代)

アントニオ・ネグリ氏不在の講演会に、東京大学安田講堂には約800名が集まった。(29日東京大学安田講堂にて 撮影:澤口佳代)

左から姜尚中氏、上野千鶴子氏、鵜飼哲氏、石田英敬氏がネグリ氏の講演についてディスカッションを行った。( 29日東京大学安田講堂にて 撮影:澤口佳代 )

<ネグリさんとデングリ対話>が開かれている東京藝術大学正門 (29日 撮影:澤口佳代)